実行予算の作り方目標原価との違いと、工種ごとの組み立て方

受注は取れた。では、この工事はいくらで仕上げれば利益が残るのか。それを工種ごとに決めておくのが実行予算です。

実行予算とは

実行予算とは、受注した工事をいくらの原価で仕上げるかを、 着工前に工種ごとに決めた社内の予算です。お客様に出す見積とは別物で、外には出しません。

目的はひとつ、利益を残すことです。見積の段階で見込んだ利益は、あくまで「この原価で収まれば」という前提の上にあります。 その前提を現場の実勢価格で組み直し、無理があるなら着工前に手を打つ。これが実行予算の役割です。

ポイント

実行予算は「作って終わり」の書類ではありません。発注のたびに予算と突き合わせ、 超えそうなら別の工種で吸収する。着工から完工まで使い続ける管理表です。

見積・目標原価・実行予算はどう違うか

この3つは金額が近く、名前も似ているため混同しやすいところです。役割で分けると整理できます。

区分何の金額か誰のための数字か
見積金額お客様に提示する売価。値引きや端数処理を経て契約金額になるお客様
目標原価見積の原価部分。見積単価に原価率を掛けて算出する自社(見積時点の見込み)
実行予算実際に使う原価の上限。業者の見積や実勢単価で組み直したもの自社(着工前の計画)
実績原価実際に発生した原価。発注・検収を経て確定する自社(完了後の結果)

順番としては 見積 → 目標原価 → 実行予算 → 実績原価 と進みます。 実行予算を作る作業は、目標原価を出発点にして、それを現実の単価で置き換えていく作業だと考えると分かりやすくなります。

目標原価をそのまま実行予算にしてはいけない理由

目標原価は見積単価に一律の原価率を掛けた数字なので、工種ごとの実態を反映していません。 防水は相場どおりでも、足場だけ高騰している。そうした偏りは目標原価には現れません。 工種ごとに業者の単価を当てはめて初めて、どこが苦しいのかが見えます。

実行予算を組む6つの手順

  1. 1

    見積を工種ごとに分解する

    防水、シーリング、塗装、足場といった工種ごとに明細を分けます。ここが粗いと、あとで「どの工種で赤字が出ているか」が分からなくなります。

  2. 2

    工種ごとの目標原価を出す

    見積の原価単価×数量で、工種ごとの目標原価を集計します。この時点の合計が、見積で見込んだ原価の上限です。

  3. 3

    工種ごとに予定業者を決める

    誰に頼むかが決まらないと単価が決まりません。相見積を取る工種と、いつもの業者に任せる工種を切り分けます。

  4. 4

    業者の単価で予算単価を入れ直す

    業者から出てきた見積、あるいは直近の実勢単価に置き換えます。目標原価より高い工種も安い工種も、そのまま入れます。

  5. 5

    目標原価との増減を工種ごとに見る

    工種単位で差額を出します。全体だけ見ていると、超過と余剰が相殺されて問題が隠れます。

  6. 6

    超過している工種を詰め直す

    仕様の見直し、業者の変更、数量の再確認。ここで手を打てるのが着工前だけです。詰めきれない場合は、余裕のある工種で吸収できるか全体で判断します。

ポイント

手順4で「予算単価は目標原価より安くしなければ」と考える必要はありません。 高い工種があること自体は問題ではなく、全体で契約金額を下回るかが判断の基準です。

よくある失敗

よくある失敗

着工してから作る

いちばん多い失敗です。足場を組んでから予算を組んでも、その発注はもう変えられません。 実行予算が意味を持つのは、まだ発注していない工種が残っているうちだけです。契約直後に作ります。

よくある失敗

工種をまとめすぎる

「外装工事 一式」でまとめると、超過に気づけません。発注する単位=業者に頼む単位で分けるのが目安です。 発注書を出す相手が分かれるなら、予算も分けます。

よくある失敗

予算と発注が別管理になっている

予算はエクセル、発注書は別のフォルダ。この状態だと、発注額が予算を超えても誰も気づきません。 発注のたびに予算へ跳ね返る形にしておくと、超過はその場で分かります。

よくある失敗

値引き分を工種に配らないまま放置する

契約時の値引きや端数処理は売価側の調整です。原価には影響しないので、値引いた分はそのまま粗利が減ります。 「見積では20%取れていたのに、契約後は17%だった」という差はここで生まれます。原価管理のガイドで詳しく扱っています。

エクセルで作るときの限界

実行予算はエクセルでも作れますし、実際に多くの会社がそうしています。問題は運用が続いたときに現れます。

  • 見積を直したときに、実行予算のシートへ手で写し直すことになる。写し忘れると数字がずれる
  • 発注書を別で作るため、予算・発注・原価の3か所に同じ品名を打ち込むことになる
  • ファイルが個人のPCにあり、担当者以外は今いくら使ったのか分からない
  • 工事が増えると、会社全体の粗利を出すのに全ファイルを開いて集計する必要がある

どれも「同じ数字を複数の場所に持っている」ことが原因です。見積・実行予算・発注・原価を ひとつのデータの上で扱えば、写し替えの作業と、写し間違いの両方がなくなります。

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